―――ディスレクシアとは、知的能力や知覚能力には異常がないにもかかわらず、文字の読み書きが困難になる障がいです。発達障がいの中でも、殊更見えづらく、見落とされがちな障がいでもあります。 人一倍の〝努力〟や〝生真面目さ〟や〝勤勉さ〟というプラスの要素を持ったディスレクシアの子どもたちは、更にこの障がいを見えづらくさせ、適切な支援から遠ざかって苦しんでしまうという逆転現象が起こる不思議な障がいです。
障がいというのは、努力とは関係なくできないことがあるということですが、ディスレクシアはそのことを無視されがちな障がいです。文字を書く、読むことの訓練は、ディスレクシアの子の集中力や精神力、体力を奪っていく。好きなことや興味を持っていることへの探求心や情熱まで、容赦なく削っていく行為です。このことをどうか理解して欲しいです。
子どもの頃から私は絵を描くことが好きでした。好きなことをする時間は、漢字の書けない自分や、イジメられて傷ついたことを忘れることができる幸せな時間でした。
私は、人とは違う特性を持って生まれてきた。学校から離れた今の環境では、自分は自分のままでいい、貴方は貴方であるように振る舞えばいいと許されているように感じる。私は自分が感じ見たものを、私が描かなくてはならないものを、私が描く必要のあるものを描いていきたい。
―――濱口瑛士
濱口瑛士くんは、文字を書くことは苦手で、書くのに時間がかかりますが、絵を描くスピードはとても早く、パソコンを使えば文章を書くことも得意です。
言語IQがとても高く、学校の授業もよく理解でき、好きな歴史などは非常に知識が豊富な瑛士くんですが、小学校はもちろん、中学校でもパソコンの持ち込みは禁止、テストも自筆の答案しか認められないため、まったく評価をしてもらえません。
本書では、彼の頭の中を、一部ですが表現でき、理解してくれる人が増えることを願っています。同時に、このような子供たちの苦しみが軽減されるよう、小中学校でも配慮が進むこと願います。